高度肥満とは
一般に、高度肥満はBody Mass Index(BMI)が35以上の方です。「高度肥満」になると、肥満に関連する重篤な合併症を有する可能性が高くなり、それが命を脅かす可能性も高くなります。
高度肥満の原因は?
肥満になる原因は、非常に複雑です。それは単に食べ過ぎの結果ではありません。高度肥満が確立されてしまうと、食事制限や運動療法だけでは、長期間の減量効果は乏しいことが報告されています。
高度肥満が健康に及ぼす影響
高度肥満の患者さんの平均寿命は明らかに短く、健常人と比較して2倍の死亡率であり、糖尿病や心臓発作による死亡の危険率は5倍から7倍といわれています。米国では年間40万人以上が、肥満が原因で亡くなっています。高度肥満の患者さんが糖尿病や心血管疾患のリスクが高くなるのは想像できると思いますが、がんになるリスクも2倍以上と言われています。
高度肥満の治療について
Christou NV, Sampalis JS, Liberman M, et al. Surgery Decreases Long-Term Mortality,
Morbidity, and Health Care Use in Morbidly Obese Patients. Ann Surg 2004
高度肥満に対する治療ではまず、内科的治療を受けて頂くことです。内科的治療は食事制限、運動療法、カウンセリングに基づいて行われます。多くの方がクリニックや病院に通院して高血圧や高脂血症や糖尿病などの生活習慣病の治療に加えて、生活指導を受けていると思います。しかし、残念ながら、この治療を受けても、効果がない患者さんや効果が続かない患者さんが多くおられます。また、薬物療法もありますが、副作用が多く、さらに継続的な減量を得られないことから一部の方しか継続することができません。このような八方塞がりの状態の方が、減量外科の対象となります。手術をするのであれば、若い方の方が効果は高いです。
高度肥満に対する手術は決して簡単に安易に行うものではありません。手術の対象となる患者さんはこのままだと命を落とすような危険性が高く、先ほど申したように八方塞がりの患者さんです。この手術は決して楽をしてやせるための手術ではありません。患者さんの命を守るための手術であることを理解してください。
多くの患者さんにとって、手術を受けずに肥満に関連する合併症で死亡する危険率の方が、手術の合併症で死亡する確率よりもはるかに高いといわれています。手術を受けることで心血管疾患のリスクが約60%、糖尿病のリスクは約90%、がんのリスクが約60%低下すると報告されています。手術をすることで、肥満に関連する合併症で死亡するリスクを9分の1に減らすことができます。
手術の適応について
- BMI30以上の方
- 肥満に起因する合併症をお持ちの方
- 内科治療を行ったが効果が無かった方
腹腔鏡下スリーブ状胃切除術に限り、以下すべてに該当する方は保険適応となります。
BMI35以上の場合
- 6ヶ月以上の内科的治療を継続している
- 糖尿病、脂質異常症、高血圧、睡眠時無呼吸症候群のいずれかを合併している
BMI32.5~34.9の場合
- 6ヶ月以上の内科的治療を継続している
- 糖尿病を合併しており、ヘモグロビンA1cが8.4%以上
- 高血圧症※1、脂質異常症※2、睡眠時無呼吸症候群※3 のうち、1つ以上を合併している
※1 降圧剤による薬物治療を6ヶ月以上行っても管理が困難(収縮期血圧160mmHg以上)なものに限る
※2 薬物治療を6ヶ月以上行っても管理が困難(LDL-C140mg/dL以上またはnon-HDL-C170mg/dL以上)なものに限る
※3 AHI30以上の重症のものに限る